カスタム電源における適切な熱管理・設計
カスタム電源の受託設計・開発はデコへお任せください
デコではカスタム電源・光学ユニットを主軸としながら、漏電ブレーカーやUV-C除菌ユニットなどを含めた電子機器・ユニットの設計開発を得意としております。
ファブレスメーカーであるため製造工程は海外の協力工場が担いますが、製品のコア部分となる設計はデコが責任を持って対応し、お客様のご要望の仕様を図面に落とし込みます。
ゼロからの開発はもちろん、既存製品のカスタマイズや、あらかじめ自社で仕様を決め開発した自社製品の取り扱いもございますのでお気軽にご相談ください。

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目次
現代の産業機器や通信・医療機器において、システムの心臓部とも言えるカスタム電源に対する要求は日々厳しくなっています。機器の小型化や高性能化に伴い、電源も同様に小型化と高周波化が急速に進んでいます。
しかし、機器が小さくなるということは、限られた体積の中で発生する「熱の密度」が劇的に高まることを意味します。回路設計が終わった最後に、空いたスペースへヒートシンクや冷却ファンを追加して熱を逃がすといった後付けの熱対策では、もはや対応しきれません。
現在の電源設計において、熱管理(サーマルマネジメント)は単なる冷却手段ではなく、システムの電気的性能、長期的な信頼性、そして最終的な製品サイズを決定づける「重要な設計パラメータ」となっています。

熱をオームの法則で可視化し、マージンを取る
熱対策のステップとして、まずは目に見えない熱の流れを電気回路に見立てて計算・予測することが重要です。実務でよく用いられるのが、熱をオームの法則に当てはめる考え方です。発熱源(電力損失:W)を電流、熱の伝わりにくさ(熱抵抗:℃/W)を抵抗、そして温度上昇(℃)を電圧として捉えます。
デバイスの内部温度は、以下のシンプルな式で求めることができます。
接合部温度 = 周囲温度 + (発熱量 × 経路全体の熱抵抗)
ここで守るべきポイントがディレーティング(=余裕を持って部品の定格値以下で動作させること)です。
メーカーのデータシートに記載されている半導体の最高使用温度をギリギリまで使うような設計はご法度となります。実際の設計においては最高使用温度に対して70%〜80%程度を上限とする温度マージンを必ず設定します。
発熱源を正しく見積もる
計算の前提となる発熱量を正確に見積もることが、熱設計の成否を分けます。机上の計算と実際の製品で温度が合わない場合、多くはこの見積もりにズレが生じています。
半導体の熱的ポジティブフィードバックに
注意

MOSFETなどのパワー半導体では、電流が流れる際の導通損失と、ON/OFFが切り替わる際のスイッチング損失が主な熱源です。
この時に陥りやすい罠が、「半導体のオン抵抗は、温度が上がると数値が大きくなる」という特性を見落とすことです。冷却が不十分だと、温度が上がる→抵抗が増える→さらに発熱するという熱の悪循環(ポジティブフィードバック)を引き起こし、最悪の場合は熱暴走でデバイスが破壊されます。したがって、損失計算は室温での抵抗値ではなく、必ず想定される最高動作温度での抵抗値を用いて行う必要があります。
磁性部品(トランス・コイル)は
データシートを鵜呑みにしない

半導体と並んで大きな熱源となるのが磁性部品です。部品メーカーのデータシートに載っているコア損失のグラフは、綺麗な正弦波(サイン波)を前提としていることがほとんどです。 しかし、実際のスイッチング電源の波形は複雑な方形波です。データシートの値をそのまま使うと、実際の損失が想定より30%〜50%も大きくなることがあります。
また、大きな直流電流が重畳される(DCバイアスがかかる)と損失特性が悪化することや、コアの材質によっては「80℃〜100℃付近で最も損失が少なくなる(V字カーブ)」といった特性を持つことも考慮し、最も効率良く動作する温度域にコントロールする視点が求められます。
熱を逃がすための実装・機構設計の工夫
発生してしまった熱を、いかに効率よく外へ逃がすかについてはここでは物理的な構造や材料の選定がカギを握ります。
トップサイド冷却(TSC)の導入
従来の表面実装部品は、熱伝導率の悪いプリント基板(PCB)を介して、基板裏面のヒートシンクへ熱を逃がすボトムサイド冷却が主流でした。しかし、これでは基板そのものが熱を遮る障害物になってしまいます。
そこで最近のハイエンド電源では、部品の上面から直接ヒートシンクに熱を逃がすトップサイド冷却構造が採用され始めています。これにより、基板を経由しない最短ルートで放熱でき、システム全体の熱抵抗を劇的に下げることが可能です。基板の裏面を放熱用にあける必要がなくなり、部品の高密度実装が可能になるというメリットもあります。
TIM(熱界面材料)の選定と圧力管理
半導体とヒートシンクの微細な隙間を埋めるTIMの選定も重要です。単にカタログの熱伝導率が高いものを選ぶのではなく、用途に応じた使い分けが必要です。
- 相変化材料(PCM)
一定温度で固体からゲル状に変わり、微細な隙間を完全に埋めて接触熱抵抗を極限まで下げます。過渡的な熱負荷のバッファとしても機能します。 - 液体ギャップフィラー
硬化する液状材料で、高さにバラつきがある複数部品をまとめて冷却する際に重宝します。 - 窒化アルミニウム (AlN) 絶縁シート
高電圧の電源などで、高い絶縁性と熱伝導率の両方が求められる場合に使用されます。硬い素材のため、グリスなどと併用して密着させる工夫が必要です。
また、TIMは適切な圧力をかけないと性能を発揮しません。ネジの締め付けトルクを厳密に管理し、温度変化による基板の反りを考慮した機構設計が必要です。
熱をなるべく出さない回路・基板レイアウトのアプローチ
さらなる手段として、冷却機構を強化することに加えて「そもそも熱を発生させない」という回路的なアプローチをとることも考えられます。
ZVS(ゼロ電圧スイッチング)とWBG半導体の活用
スイッチング損失を物理的になくす手段として、MOSFETがONになる瞬間の電圧をゼロにする「ZVS(ゼロ電圧スイッチング)」技術(LLC共振コンバータなど)の採用が極めて効果的です。 また、SiCやGaNといった次世代デバイスは、従来のシリコンに比べてスイッチング速度が圧倒的に速く、損失自体を根本から削減できます。特にSiCは素材自体の熱伝導率が高いため、チップ内で発生した熱を外に逃がしやすいという熱設計上の大きなアドバンテージを持っています。
基板そのものをヒートスプレッダーとして使う
プリント基板の配線レイアウトも立派な熱設計の一部です。熱源となる部品の直下にサーマルビアを多数配置し、基板の内層にある広い銅箔プレーン(グラウンド層など)へ熱を逃がします。銅箔の厚みを通常の1ozから2oz、3ozへと厚くすることで、局所的な温度上昇を解消し、基板全体に熱を拡散させることができます。
以上のように、一概に「熱設計」とってもさまざまな切り口でのアプローチが考えられます。発熱量を条件に合わせて正しく予測した上で、発熱を抑える回路技術、あるいは熱を逃がす実装技術を駆使しながら、マネジメントをしていくかという視点が製品の信頼性を高める上で非常に重要となります。

