電子機器におけるノイズ対策(EMI・EMS)|電源やLED照明、ブレーカー等の開発

ノイズ対策(EMI・EMS)を考慮した
電子機器・ユニットの設計開発はデコへお任せください

デコではカスタム電源・光学ユニットを主軸としながら、漏電ブレーカーやUV-C除菌ユニットなどを含めた電子機器・ユニットの設計開発を得意としております。

ファブレスメーカーであるため製造工程は海外の協力工場が担いますが、製品のコア部分となる設計はデコが責任を持って対応し、お客様のご要望の仕様を図面に落とし込みます。

各業界や国ごとに求められるEMI対策の基準も異なるため、それぞれの仕様に準拠させる形で設計段階からサポートいたします。お気軽にお問い合わせください。

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ノイズ対策における3つの要素

電子機器におけるノイズ対策の第一歩としては、ノイズを生み出す「発生源」、ノイズが伝わっていく「経路」、そしてノイズの影響を受ける「受信側」という3つの要素を正確に把握することから始まります。これら3つの要素が連動することで、ノイズは機器の内部や外部へと広がっていきます。

例えば、ICなどの電子部品(発生源)で生まれた電気的なノイズが、基板上の配線(経路)を伝わっていき、さらにその配線が意図せずアンテナの役割を果たしてしまうことで、空中に向けて電磁波として放出されるといった具合です。

設計者に求められるのは、本来の信号や電力を正しく伝えながら、意図しない電磁エネルギーの漏れを防ぎ、かつ外部からのノイズにも耐える電磁両立性を実現することです。

ノイズ対策の基本「出さない・受けない・通さない」

ノイズ対策の究極の目的は、自社製品が外部へ放出するノイズを抑える「EMI(電磁妨害)」と、外部からのノイズに耐える「EMS(電磁感受性)」を両立させる「EMC(電磁両立性)」の確保にあります。設計者が意識すべき要素は、3つの視点に集約されます。

要素対策アプローチ
出さないEMI対策スイッチング速度の制御、スペクトラム拡散
受けない(受けても耐える)EMS対策シールド、サージ保護素子の活用、ソフトウェアによる冗長設計
通さない伝導経路の遮断フィルタリング、基板レイアウトの最適化

高速なスイッチング動作によるノイズの増大

デジタル回路において、ノイズの最大の発生源はICなどの「高速なスイッチング動作」です。信号がオフからオンへ切り替わる立ち上がり時間(Rise Time)や、立ち下がり時間(Fall Time)が短くなるほど、信号に含まれる高周波成分は一気に増大します。

増大イメージ

信号が持つ周波数成分の広がりは、概ね以下の数式で近似されます。

システム全体のクロック周波数がそれほど高くなくても、一つひとつの信号の立ち上がりが急であれば、それだけで広帯域の強力なノイズを生み出してしまうのです。

また、DC/DCコンバータのような電源回路では、大電流を高速でオン・オフするため、配線が持つ目に見えない寄生インダクタンスと寄生容量が共振を起こし、リンギング(Ringing)と呼ばれるスパイク状のノイズが生じます。

ノイズ対策の土台となるプリント基板設計

ノイズ対策において、最も費用対効果が高いのがプリント基板のレイアウト設計段階における対策です。試作後にノイズ対策部品を追加するよりも、銅箔の引き方ひとつを工夫する方が、はるかにコストを抑えながら確実な効果をもたらします。

リターンパスの確保

高周波信号を扱う際、電流は単に一番短い距離を通って戻ってくるわけではありません。信号線直下のプレーン層(GNDなど)を通る最小インピーダンスの経路を選んで帰ろうとします。この帰り道をリターンパスと呼びます。

もし、GNDプレーンに不要なスリットがあったり、ビアが密集してプレーンが削られていたりすると、リターン電流はスリットを避けて大きく迂回しなければなりません。すると、行きと帰りの電流経路によって作られるループ面積が拡大します。このループ面積こそがアンテナとして機能し、強烈な磁界ノイズを空間に放射してしまうのです。

やむを得ず信号線がスリットを跨ぐ場合は、すぐ近くにバイパスコンデンサを配置し、高周波電流がショートカットして戻れる経路を確保するなどの工夫が必須となります。

スタックアップと20Hルール

多層基板における層の重ね方(スタックアップ)も重要です。電源層とGND層を隣接させると、層と層の間に平行平板容量というコンデンサ成分が生まれ、高周波ノイズを吸収する優れたデカップリング効果が得られます。

さらに、基板の端からの電磁波の漏れを防ぐために有効なのが20Hルールです。これは、電源層の端をGND層の端よりも内側に引き込ませる(層間距離Hの20倍程度)という設計指針です。これにより、端部から漏れ出ようとする電界をより広いGND層がキャッチして外への放射を抑え込みます。

さらに、基板外周にGNDビアを高密度に配置するガードリング(Guard Ring)構造を併用することで、放射ノイズの抑制効果を高めることができます。

差動伝送路の落とし穴

USBやHDMIなどで使われる「差動信号」は、2本の線に逆位相の電流を流すことで、発生する磁界を打ち消し合う素晴らしいノイズ低減技術です。しかし、これには「2本の配線長が厳密に同じ」「リターンパスが対称である」という厳しい条件がつきます。

少しでも長さが違ったり、周辺の配線状況が非対称だったりすると、打ち消しきれなかったエネルギーがコモンモードノイズという非常に厄介な放射ノイズに化けてしまいます。これを防ぐためには、配線の等長化はもちろん、コネクタの手前でコモンモードチョークコイル(CMCC)を挿入するなどの対策が効果的です。

次世代パワー半導体(SiC/GaN)のノイズ課題

近年、電力変換効率を飛躍的に高める救世主として、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)といったパワー半導体の採用が急増しています。

  • 高耐圧・高出力
  • 高温での動作
  • 熱伝導率が高い

これらの特徴により、高温下での安定動作・小型化に寄与します。

■ 用途

  • 高耐圧・高速スイッチング
  • 小型化・軽量化
  • 高効率・低損失

これらの特徴により、スイッチング損失の大幅低減に寄与します。

■ 用途

SiC・GaNいずれも従来のSi基板の課題であった低い耐圧・遅い・熱に弱いという3課題を克服する優れたパワー半導体ですが、その圧倒的な性能は、これまで経験したことのないレベルのノイズを引き起こすリスクがあります。

急激な電圧変化率によるコモンモードノイズ

従来のシリコン素子の電圧変化率が20V/ns程度であるのに対し、GaNやSiCでは100V/nsを超える極めて急激な電圧変動が起こります。

この大きな変動は、絶縁トランスの一次側と二次側にあるわずかな寄生容量や、ヒートシンクと基板間の浮遊容量を突き抜け、システム全体に巨大なコモンモード電流を流出させます。これが制御ICに流れ込むと、最悪の場合は素子が破壊されてしまいます。

対策として、200V/ns以上の高い耐性(CMTI定格)を持つ最新のゲートドライバICを選定することや、トランスの寄生容量を1pF以下に極小化する高度な設計が強く求められます。

ミラー効果による誤点灯

ハーフブリッジ回路などで、片方のスイッチが猛スピードでオンになった瞬間、もう片方の「オフになっているはずのスイッチ」にノイズ電流が流れ込み、勝手にオンになってしまう現象があります(ミラー効果)。これが起きると、上下のスイッチが同時にオンになり、回路がショートして大電流が流れてしまいます。

これを防ぐためには、素子がオフの時にゲートを物理的にGNDにショートさせるアクティブ・ミラー・クランプ回路を追加したり、オフの時の電圧を0Vではなく-3Vや-5Vといった負電圧に設定して、ノイズに対するマージンを強制的に稼ぐ負電圧駆動といった手法が想定されます。

アプリケーション別の対策

製品の用途によって、求められるノイズ対策の要点は異なります。ここでは3つの代表的な機器を例に挙げます。

【電源ユニット】ノイズを散らすスペクトラム拡散

電源ユニットは外部のコンセントに直結されるだけでなく、機器全体に電力を配る心臓部です。そのため、電源回路で発生したスイッチングノイズは、外部の電力網へ漏れ出すだけでなく、機器内部の繊細なICの誤動作を引き起こす最大の原因にもなります。

対策の基本は、入力部や出力部にノイズフィルタを配置し電気的なノイズの出入りを物理的にブロックすることです。さらに近年では、電源IC自体に「スペクトラム拡散」という技術がよく搭載されています。これは、スイッチングのタイミングをあえて常に少しずつ変動させる技術です。

ノイズのエネルギーが特定の周波数に巨大なピークとして集中するのを防ぎ、広い帯域に薄く分散させることで、システム全体へのノイズの悪影響を和らげ、各種規制もクリアしやすくする賢い手法です。

【LED照明】小型化と厳しいCISPR規格の両立

LED照明は、明るさを調整するためにPWM制御と呼ばれる高速なオン・オフのスイッチング動作を行っています。しかし、この電気的なオン・オフが強力なノイズ源となり、照明自体のチラつきの原因になったり、同じ配線に繋がった他の家電や通信機器へ悪影響を及ぼしたりします。

ノイズ対策の基本は、電源ラインに適切なフィルタ部品を追加し、不要なノイズ電流をしっかり遮断することです。同時に、電球などの限られたスペース内でノイズが広がる経路(電流のループ)を最小限に抑え込む基板レイアウト設計が求められます。

また、LED照明は自身が発する熱によって筐体内部が高温になりやすいため、ノイズ対策部品には過酷な温度環境でも性能が劣化しない、耐熱性の高い部品を選定することが設計を成功させるカギとなります。

【漏電ブレーカー】高周波ノイズや雷サージによる誤作動を防ぐ設計

漏電ブレーカーは、配線の「行き」と「帰り」の電流のわずかな差(漏れ)を高感度なセンサーで検知し、瞬時に回路を遮断して感電や火災を防ぐ重要な安全装置です。しかし、この微小な変化を捉える繊細な検知・判定回路は、外部からの電気的なノイズに対して非常に敏感です。

特に厄介なのが、エアコンや洗濯機などのインバータ家電から配線を伝ってくる高周波ノイズや、落雷によって発生する強烈な雷サージです。これらがブレーカー内部に侵入すると、実際には漏電していないのにノイズを漏洩電流と勘違いしてしまい、突然電気が切断される誤作動を引き起こしたり、最悪の場合は内部回路が破壊されたりしてしまいます。

対策法として、雷などの破壊的な大電圧サージに対しては、バリスタなどの保護素子を入力部に配置してサージエネルギーを吸収し、回路を守ります。また、日常的なインバータ等の高周波ノイズに対しては、センサーと判定ICの間にコンデンサを用いたフィルタ回路を設け、誤作動の原因となるノイズ成分だけをうまく逃がす工夫がされています。